「アスリートの力の源」
長いと思っていた夏休みも「あっ」という間に終わり、授業が再開しました。
子どもたちは夏休みの経験や学び、感動、思い出をたくさん抱えて学校に来たことでしょう。それらはきっと今後の生活に生かされるに違いありません。
私にとって、スポーツ観戦は、夏休み中の楽しみの一つでした。特に、今年も高校野球の中継から目が離せず、テレビの前でこぶしを上げ、大きな歓声を上げ楽しみました。これも3年ぶりの感動でした。どんな試合であっても、全力でぶつかり合い相手と向き合う姿、汗を流し記録に挑み集中する姿、勝負が終われば絶叫、満面の笑み、涙など、選手たちの姿はほんとうに美しかったです。そして、選手たちの流す涙、また応援団の流す涙にこちらももらい泣きしました。優勝した仙台育英の監督インタビューに感動した方も多くいたのではないでしょうか。
沢山の感動の影には、どれほどの努力や我慢、あるいは体にも心にも負ったであろう痛みがあったことでしょう。特にコロナ禍での苦悩は、観る側からは想像でしかわかりません。選手たちの苦悩や努力や忍耐は、勝利することや、達成感を味わうこと、あるいは記録の更新などによって報われ、更にポテンシャルを上げていったことでしょう。周囲に支えられ応援され、認められているという有要感も、動機付けの一つとなっています。高校野球の各校の特徴のある応援やブラスバンドによる応援合戦も選手を鼓舞し、チャンスを作り、得点につながった場面をいくつも観ました。応援が選手たちの力になっているのを実際に感じることができました。スタンドとグランドが一体となっている様子にも感動を覚えます。勝利者インタビューに、必ず周囲への感謝、家族への感謝が語られるのも、彼らの自然な姿です。
スポーツ科学の分野で、トップアスリート数名を抽出し彼らがどのような環境や家庭や成育歴の中で、一流のアスリートへと成長していったかを、本人や家族のインタビューも交えて研究したレポートを見たことがあります。
その中の一人に、プロゴルファー宮里藍さん(2017引退)が挙げられていました。彼女はおじいちゃん子で、祖父母から愛情をいっぱいかけられて育ちました。勿論両親からも愛情を受け、思いやりとやさしさに包まれて育ちました。家族にはいつも会話があり団欒がありました。自分が認められ愛されていることを実感したとき潜在的な力も発揮された、と本人も言っています。「家族の団欒」として始めたスポーツが、おじいちゃんや両親、兄弟姉妹とのコミュニケーションを生み、そこから更に技能と意欲を育てていったのでした。参考「トップアスリートにおける両親の教育方針」(2012)
私たちの身近な子どもたちにも、忍耐力や努力の尊さ、達成感を味わってもらいたいものです。自分がどれほど認められ価値ある存在であるかということに気づいたときに、学習や与えられた課題をやりぬこうとする意欲や人のために役立ちたいという奉仕の心も、大きく膨らんでいくのではないでしょうか。子どもたちに、愛されている存在、価値ある存在であることをもっともっと伝えていきたいと思います。
「主が言われた、『わたしの恵みはあなたに対して十分である。わたしの力は弱いところに完全にあらわれる。』」聖書 コリント人への手紙二 12章9節
ご家庭の上に神様からの祝福が豊かにありますようにお祈りいたします。
校長 小原義信