『天につかえ、天に宝を積む』
新年明けましておめでとうございます。皆様はどのようなお正月を迎えましたでしょうか。皆様にとって幸せな一年となりますようお祈りいたします。本年もどうぞよろしくお願いいたします。寒さはまだ続きます。どうかご自愛ください。
年末年始、世界中の新型コロナ感染状況や、事件・事故、政治や経済の不安定さ、混沌とした状況などのニュースが相も変わらず流れていました。
昨年、NHK大河ドラマ「青天を衝け」をご覧になった方もおられるかと思います。新一万円札の図柄に渋澤栄一が選ばれたということもあって話題となりました。大河ファンの私もドラマを楽しんだ一人です。幕末から明治へ、時代の混乱と大渦に翻弄された世の中にあって多くの歴史に残る志士たちは、新しい時代を拓くために熱く活躍しました。志士たちは様々な学問を通して、あるいは彼ら自身が尊敬する偉人たちを通して影響を受け、それらを実現すべく厳しい現状を切り開き、当時からは遠い将来(現代)にも影響するような数々の文明や文化を築いていきました。
渋澤栄一は、ドラマにも登場する儒学者や論語にも影響を受けました。後に論語に関する書物をたくさん執筆しています。そこには経済や政治、文化的な背景に、道徳的な思想も多く含まれています。
江戸時代に佐藤一斎という儒学者がおり、人が人間らしく生きるために考え付いたことを「言志四録」という書物にまとめました。佐藤一斎の弟子として教えを受け継ぎ、後に明治維新において日本を動かした志士たちにこの教えを説いたのが佐久間象山という思想家です。象山の塾(学校)で吉田松陰や勝海舟、坂本竜馬などが学び、西郷隆盛も影響を受け、渋澤栄一の手元には「言志四録」がいつもあったという説もあります。
「言志四録」の一節です。
「凡そ事を作すには、須らく天に事うるの心有るを要すべし」(およそことをなすには、すべからくてんにつかうるのこころあるをようすべし)
旧約聖書の中に「預言者の学校」というものが出てきます。預言者は神の知恵を求めます。神につながり神の知恵を持っている者は、どんなに危機的な状態、不安な状態であっても、揺らぐことなくぶれることなく毅然として立ち進んでいきます。聖書の預言者たちは、繁栄のときや裕福なとき、あるいは平穏で安心なときには、これでよいのかと常に警鐘を鳴らしていきます。イエス・キリストは、弟子たちに大切な言葉をたくさん残しました。弟子たちはそれらを聖書に残しました。それは、今を生きる私たちにとって励みであり、救いであり、必要な言葉です。
明治維新の志士たちの多くは聖書にも精通していました。外国に視察に行ったり留学したりする中で西欧文化や思想にもつながる聖書に出会うことがありました。道徳的な思想も多く含む「言志四録」や儒学を学んできた彼らにとって、人の生きる道を示した聖書の教えを受け入れるのは、それほど難しいことではなかったと想像できます。
聖書にも次のような言葉があります。
「天に、宝をたくわえなさい。あなたの宝のある所には、心もあるからである。」マタイ6章20,21節
三育で学んだ一人一人が、天につかえ、天に宝を積み、天を受け継ぐ者となっていってほしいと願っています。
ご家庭の上に神様からの祝福が豊かにありますようにお祈りいたします。
校長 小原義信